リウマチ外科 関節リウマチ手術/総論 下肢
関節リウマチ手術 総論・下肢
京都大学整形外科リウマチグループでは関節リウマチ患者さんのあらゆる関節に対応した手術を行っています。
滑膜切除術 |
関節破壊があまりみられず、十分な薬物治療によっても滑膜炎が残存した関節に実施します。 |
関節形成術 | 変形による障害があり、また関節破壊が比較的少なく、薬物治療によって疾患活動性が十分抑えられている例に実施します。手部関節や足部関節に行うことが多いです。 |
関節固定術 |
関節破壊と変形が強く、また関節可動性があまり要求されない関節に行います。また有効な人工関節が存在しないか長期成績があまりよくないことが危惧される関節に行います。母指、足部の関節で検討します。 |
人工関節置換術 |
関節破壊が強く、長期成績が比較的安定している関節に行います。膝関節、股関節、肘関節、足関節、手指関節、肩関節に実施しています。 |
脊椎手術 |
関節リウマチ患者さんは一般に骨粗鬆症が強く、感染などのリスクも高いため、慎重な手術手技と術後管理が重要である。頚椎手術、胸腰椎手術は脊椎グループの協力の下、実施しています。 |
以下、当グループで実施している代表的な手術です。
リウマチ外科専門医が各患者さんの病態に合わせて、適切な手術を選択・実施しています。
下肢
● 人工膝関節置換術
軟骨や骨がすり減って、薬物療法などの保存治療でよくならない場合などに実施しています。膝の痛みが減少し、歩行しやすくなります。
痛んだ関節表面を人工膝関節の部品の厚み分だけ削り、人工関節を設置します。20年以上の寿命が期待できます。
当グループの本手術の特徴として
ナビゲーションを使用して数mm、数度単位にこだわった正確な手術を行っています。
関節リウマチ患者さんの弱い骨、靱帯に対応した手術を行っています。
抗リウマチ薬やお持ちの併存疾患(肺や腎臓など)のリスクを評価してきめ細かい手術を行っています。
関節リウマチ患者さんの重度変形に対応しています。
<代表症例>
78歳女性。15年前に関節リウマチと診断。5年ほど前から膝関節痛があり、歩行のしにくさや階段の昇りにくさを自覚していた。関節リウマチはメソトレキサートと生物学的製剤を使用しており、血液検査上は炎症反応も陰性であった。
レントゲン上関節破壊を認め、薬物治療ではこれ以上の改善は見込めないと判断し、人工膝関節置換術を行った。
術後3週間で片杖歩行が可能となり退院となった。
術後6ヶ月で歩行時の膝関節痛はほとんどない。
● 人工股関節置換術
軟骨や骨がすり減って、薬物療法などの保存治療でよくならない場合などに実施しています。股関節の痛みが減少し、歩く力を取り戻すきわめて有効な治療法です。
20年以上の寿命が期待できます。
当グループの本手術の特徴として
ナビゲーションを使用して数mm、数度単位にこだわった正確な手術を行っています。
京都大学を中心に開発されたインプラントを使用し、良好な成績をおさめています。
関節リウマチ患者さんの弱い骨、靱帯に対応した手術を行っています。
抗リウマチ薬やお持ちの併存疾患(肺や腎臓など)のリスクを評価してきめ細かい手術を行っています。
関節リウマチ患者さんの重度変形に対応しています。
<代表症例>
65歳女性。12年前に関節リウマチと診断。数ヶ月前から右股関節痛があり、歩行がしにくくなってきた。関節リウマチはメソトレキセートのみで治療している。
レントゲン上右股関節破壊像を認め、人工股関節置換術を行った。
術翌日より車いす移動訓練を開始、その後歩行訓練を実施し、術後14日で退院となった。
術後6ヶ月で歩行時の股関節痛は消失した。
● 人工足関節置換術
足関節の変形により歩行が困難となった場合に実施します。対応医療機関が少ないですが、実施しています。破壊のされ方によっては、人工足関節置換術が実施できず、足関節固定術にて痛みをとることがあります。
全身麻酔での手術です。3-4週間のギプスなどによる外固定の後歩行訓練を開始します。
<代表症例>
79歳女性。関節リウマチと診断されて19年。4年前より右足関節痛があり、歩行する後激痛が走るようになってきた。
レントゲン上、右足関節に破壊像を認め、人工足関節置換術を行った。
術後3週間のギプス固定と、さらに3週間にわたる歩行練習を行った。
術後7ヶ月で歩行時の足関節痛はほとんどない。
● 足関節固定術
一般に足関節といわれる部分に痛みが生じた場合、とくに重症例では固定術を行うことがあります。足には数多くの関節があること、また固定術の適応となる患者さんは術前すでに関節の動きが悪くなっていることもあり、罹患した関節を固定しても患者さんの思っている以上に足の動きが温存されます。
距腿関節と距骨下関節に関節破壊がある場合は髄内釘で同時に固定します。重度の変形なども矯正して固定することができます。
距腿関節のみに破壊が有り、距骨下関節は破壊の場合のみ、距腿関節のみを固定します。一定の条件(変形が比較的軽度)を満たした場合、関節鏡による比較的侵襲の低い手術が可能です。また距骨下関節のみが破壊されている場合には距骨下関節固定術を施行しています。
全身麻酔での手術です。3-4週間のギプスなどによる外固定の後歩行訓練を開始します。
<代表症例>
83歳女性。関節リウマチと診断されて16年。3年前より右足関節痛があり、歩行する後激痛が走るようになってきた。
レントゲン上、右足関節に破壊像を認め、足関節固定術を行った。
術後4週間のギプス固定と、さらに2週間にわたる歩行練習を行った。
術後6ヶ月で歩行時の足関節痛はほとんど認めない。
● 足趾関節形成術・外反母趾矯正術
足趾の変形は多くの患者さんで悩まれている変形ではないかと思います。足趾の変形は手の変形と同じくらいの頻度で生じます。足趾の変形やいたみ、胼胝(タコ)などで歩行しにくくなったり、合う靴がないなどの問題が生じます。変形などの問題が軽度の場合は靴や足底板を作成したりします。それでも歩くと足の裏が痛い、足趾が靴にあたったり引っかかったりして痛いなどの場合には手術を行っています。
手術の方法は変形の程度によって色々な方法があり一概には申し上げられません。20年前には関節を切除することが一般的でしたが、最近増加傾向とされる関節温存関節形成術も多くの方で行っています。以前に関節形成術を行い変形が再発してきた方の手術も行っています。
全身麻酔で行うことが多いですが、外反母趾だけの場合は局所麻酔で行うこともあります。手術後は2~4週してから体重をかけて歩行することが多いです。
<代表症例>
74歳女性。関節リウマチと診断されて12年。足趾が少しずつ変形して、外反母趾も生じるようになってきた。歩行時に母趾が示趾と重なる。変形した足趾が靴にあったり、足の裏のタコが歩行時に痛む。
足趾関節形成術を施行した。
術後3週間のギプス固定とその後装具を作成した後歩行練習を行った。
足趾の変形が改善し、歩行しやすくなった。