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教授からのメッセージ

京都大学
整形外科学教室 
教授 松田秀一

整形外科での研修を考えている人達へ

  1. 整形外科は幅広い領域を扱っている
  2. 整形外科は現代社会に必要とされている
  3. 整形外科では基礎研究も活発に行っている

整形外科の研修をそこで受けるか悩んでいる人達へ

  1. 幅広く研修を行うには大学のシステムを利用するのもひとつの方法
  2. 留学や基礎研究に一時期従事するのもよいこと
  3. 京都大学整形外科には様々な特色を持つ関連病院がある

整形外科は幅広い領域を扱っている

頸椎、胸腰椎を中心とした体幹から指の先、足の先まであらゆる部位の疾患を扱っており、また、新生児から高齢者まで幅広い年齢層を対象としていることは整形外科特徴です。手術も脊椎側弯症の矯正術のような大きな手術から切断指の再接着のようなマイクロサージェリー、また、日本で開発され欧米に広まった関節鏡手術、人工関節置換、コンピュータ支援手術など実に様々なものがあります。整形外科というと運動部系人達が力を入れて手術をやっているイメージがあるかもしれませんが、最近は手術機が格段に進歩しており、女性も色々な手術を行っています。また、機能を再建する手術がほとんどですので、様々な工夫が患者さんの反応としてすぐかえってくるというのも整形外科手術の特徴であり、手術のやりがいをより大きなものにしています。自分が開発する手術方法などがまだまだ出てくる分野ですので、是非若い人達に入って来て頂きたいと思っています。疾患も加齢に伴う変性疾患、外傷、プロスポーツ選手のケアなども行うスポーツ整形、若年者の悪性疾患を扱う骨軟部腫瘍など、疾患の種類も多岐にわたっています。外科系に行きたいけど、まだ決めることができない、等の悩みを持っている人は、整形外科に来れば必ず自分にあった専門分野が見つかるといっても過言ではありません。

整形外科は現代社会に必要とされている

近年、高齢化社会が進み、変形性関節症、変形性脊椎症などの疾患は増加の一途をたどっており、どこの病院でも整形外科の外来、手術は多く、スタッフ増員の要請は引きも切りません。逆に最近のスポーツ人口の増加から若年者のスポーツ障害、外傷もまた増え続けています。また、骨粗鬆症や関節リウマチなど内科の先生方とオーバーラップする領域もありますが、関節、脊椎の変形なども伴うため整形外科医がイニシアティブをとって診療にあたることも多くなります。このような理由から米国では、最も人気が高い診療科のひとつであり、整形外科のレジデントになるのは大変狭き門になっています。日本では整形外科医が元々少なかったこともあり、いまののところ少々整形外科医が増えても、まだ足りない位です。

整形外科医は研究をしているのか?

もちろんしています。関節リウマチ、骨軟部腫瘍、軟骨代謝、骨代謝などの領域では、分子生物学的手法を用いた研究がさかんに行われています。また、再生医療の分野では、自己修復能に乏しい関節軟骨を再生させる研究などが活発に行われており、すでに臨床応用もはじまっています。また整形外科ならではの分野としてバイオメカニクスがあります。コンピュータを用いたシミュレーションなどを用い、どのような手術をすれば臨床成績が向上するか、といった解析を中心に研究を行っています。整形外科は脊椎固定や人工関節などに生体材料をよく用います。そのような生体材料に関する研究も整形外科がリードしてきたとも言えます。 皆さん、整形外科は21世紀に最も輝いている診療科のひとつです。是非整形外科医を志して多くの患者さんのために働きましょう!

整形外科の研修をどこで受けるか悩んでいる人達へ

まずひとつ言えることは、同じ病院で研修を続けることはあまりおすすめできない、ということです。世の中には、素晴らしい技量、知識を持った人が沢山います。小さな病院の中の数人の人から学ぶだけでは、学ぶことが少なすぎますし、指導医を越えて成長していく可能性も低いでしょう。若いうちは色んなところで研修を行い、多くの指導医から様々なことを吸収して成長していくべきと思います。また数年に1回、働く環境を変えるということもマンネリを避け、新たな刺激を受けることは良い方向に向くと思います。また、大学院や留学など基礎研究に従事する期間もあった方が良いと感じています。長い医師人生、4、5年臨床から離れても手術が下手になったりすることはありません。むしろ、ひとつのことを深く掘り下げて研究することにより、洞察力、思考力がつき、論文も客観的、ときに批判的に読むことができるようになります。短期の研究成果というよりも、物事の考え方という点がとてもプラスに働くと信じています。 そうなると、やはり大学の医局に属することが最も良いと思います。医局に入ると、自分の意思に関わらず病院を異動しなければならない、等と言う人もいます。しかし現在は初期臨床研修制度のため、卒業した大学の教室に入局するというよりは、全国どこの大学に行く自由度が高くなっています。多くの大学がそれぞれ、特色をもった研修システムを考えており、最も自分に合った研修システムを選べばよいと思います。自分の意思でシステムを選んで、そのシステムを利用してステップアップする、という考え方のほうがいいでしょう。多少は大学の言うことも聞かなければならないかもしれませんが、これはある意味give and takeです。一流企業だって官僚だって、転勤を経て様々な環境での経験を通して人材を育成するシステムをとっています。

京都大学整形外科

最後に少しだけ京都大学整形外科学教室の宣伝をさせて頂きます。京都大学整形外科は100年以上の歴史があり、と書くとかなり堅苦しい感じがしますが、歴史がある分、関連病院の充実度には目を見張るものがあります。多少遠隔地にある病院もありますが、多くの病院が高い専門性を持って診療を行っており、年間の整形外科手術件数が1,000例を越える病院も数多くあります。どの専門分野でも臨床研修を行うには十分な基幹病院が揃っており、入局して間もない時は、大学病院および整形外科を総合的に研修できる病院で研修し、その後より専門性が高い病院での研修に移るシステムをとっています。研修途中に、希望者には大学院進学や留学などを通して基礎研究に従事してもらう予定です。大学院や博士号取得はあくまでも本人の希望に基づくもので、決して強制されるものではありません。京都大学整形外科では、従来、生体材料に関する研究や分子生物学的手法を用いた研究で世界に誇るべき研究成果を挙げてきました。また京都大学内の再生医科学研究所やiPS細胞研究所との共同研究も行っています。京都大学では、基礎医学の教室や他学部の研究室には世界的に有名な研究室も多く、コラボレーションの多様性、充実度に関しては群を抜いていると言えます。このように臨床研修、基礎研究等、どれをとっても充実した研修を送ることができるのは間違いありません。  京都大学は、整形外科を志す人達を募集しています。出身大学は問いません。皆で力を合わせて整形外科の新しい未来を作って行きましょう!